メールの著作権を争った判例は平成25年3月21日東京地裁判決の一件だけだそうですが、手紙では5件の著作権に関する判例が有ることが分かりました。

詳細は、不明なものも有りますが、判例について以下のサイトで論じられていました。

岡山商大社会総合研究所報 第21写 ’2000年lO月(http://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20170615225458.pdf?id=ART0007408027 )リンク切れです。
演習2 電子メール公開の違法性?一般法律学講座
手紙やメールの著作物性知財渉外

岡山商大 一般法律学講座 知財渉外
平成8年4月26日高松高裁判決
(判例タイムズ926号p207)
著作物性を否定 著作物性を否定 著作物性を否定
平成12年5月23日東京高裁判決
 三島由紀夫の手紙
著作物性を肯定 著作物性を肯定 著作物性を肯定
平成16年12月16日大阪地裁判決 --- 著作物性判断無し ---
平成18年2月28日知財高裁判決 --- 著作物性判断無し ---
平成22年3月19日名古屋高裁判決
平21(ネ)688号
--- --- 著作物性を肯定
平成25年3月21日東京地裁判決
平成24年(ワ)第16391号
--- --- 著作物性を肯定

岡山商大のレポートは、高松高裁の著作物性を否定した判決も疑問視しており、

{わが国の従来の著作物性の判断基準を前提とするかぎり,それだけでも著作物性を認めてよいケースではなかったかと思われる。
ところが, 高松高裁の判決は著作物性の判断基準を厳格に解釈し, 「本件手紙の表現形態からみて,このような意味の独自性があるものとして法的保護に値する『創作的に表現したもの』と解することはできない。したがって,本件手紙は著作権法による保護を受けるべき著作物(同法2 条1 項1 号,10条1 項1 号) ということはできないと解するのが相当である」と述べて,手紙の著作物性を否定した。}

その後の判例を見ても、著作物性を肯定されているので、手紙やメールは著作物とみるのが妥当なのかもしれません。
手紙を著作物ととした判例が3件、メールを著作物とした判例が1件ありましたが、すべて個人間の私信についてでした。
法人から個人へのメールについての判例を検討したサイトは見つからず、結論としては裁判を起こして判断を待つしかないようですが、お客様相談室からの回答メールを公開されているサイトがそのまま放置されているケースも有ります。
気づいていないのか、気づいていても法的処置を取らないのか、気になるところです。

更に

{一般的に,手紙は著作者である差出人と,その受取人である名宛人との間のコミュニケーションの一手段であり, そこに表現される内容は両当事者のみが共有する私的な情報であって,通常は公表されることを予定しているものではない。憲法上も,基本的人権のひとつである表現の自由を実効あるものにするために通信の秘密(21条2 項後段)が保障されている。手紙は差出人と名宛人の両当事者間で取り交わされるものであり, 法理論的に名宛人は手紙を受け取ることによってその所有権を取得するが,著作物としての手紙に関する著作者人格権と著作権は,著作者である差出人に留保されることになる。}

と書かれています。

リスクを回避するために、メールは著作物の前提で、それでも公開する手段がないか、調べます。

著作権法に目を通し始めましたら、

   第二章 著作者の権利

    第一節 著作物

(著作物の例示)
第十条  この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
  音楽の著作物
  舞踊又は無言劇の著作物
  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
  建築の著作物
  地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
  映画の著作物
  写真の著作物
  プログラムの著作物
  事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

第十条の2の条文を見つけました。
この条文に照らせば、企業のお客様相談室からの回答は著作物に該当しないといえそうですが、この条文に言及した判例が有りませんので、早とちりはしない方が良さそうです。